ジェイゾロフト(塩酸セルトラリン)の官能的評価(10)

(ずっと飲んでいてもOK)<気持ちが落ち着くようになってきた。
緊張感が今まで程長くは続かず、50mgでリラックスできるようになってきた。
味は特に感じない。嫌な感じは全くない。
このままずっと飲み続けてもかまわないと思っている>
(3614 むーりんさん)

(飲み続けること)<この薬をのみ始めて約5~6年経ちます。
自分に合っているかどうかは分かりません。
(じっくり効く薬ときいていたのできっと効いているんだと思います。)
ただ急な外泊で薬を飲めなかった時、風邪のような体が重だるい感じはしました。
2日間のめなかった時は、また発作が起こるのではという不安になったこともあります。
のみ続けることに意味があると思い、のんでいます。
今現在減薬治療中(50mg)ですが、毎日飲んではいるので不安ではありません>
(3916 みそらさん)

(ずっと0.5T)<0.5錠飲んでいます。
夜中に何度も目が覚めてしまい、そこから眠れなくなったために処方していただきました。
飲むようになって、夜中に目は覚めますが、すぐにまた眠りにつけるようになりました。
0.5錠スタートで今も変わらないので、これが増えるとどうなるのか分かりませんが、今は飲みにくいということはありません。
薬は半分にできるのだなぁ、と初めて知りました>
(4671 うさこうさん)

ずっと服み続けていける、ということも重要なことです。
一時期服薬していても、症状の軽快に伴い、漸減を繰り返し、やがては精神科薬物から完全に離脱することは治療の理想です。
精神科医である以上、どんな場合もそのような展開を目指して、飽くなき執念を燃やします。
しかし、なかなかそのようには事が運ばない場合がある。
その場合でも”最後にどうしても抜けない薬物”がどのようなものであるのかが非常に重要です。
ちなみに、みなさんが一様に恐れを抱いている「薬漬け」とはどのようなものか。
これは、いわば「精神的・身体的な薬物依存状態」といえましょう。
しかし、以下については区別しておく必要があるでしょう。
1:もはやその薬物が有益な効果をもたらしているようではないのに、ひとたび抜き去ると耐え難い苦しみが襲うため、抜こうにも抜けず、どうにもならない状態
2:その薬物を飲まなかった昔と比べ、飲むようになった今は、人生の苦しみが大幅に軽減され、それゆえ生活の質も格段に良くなった。もう前の苦しみを再現したくないため、服薬の継続を患者さん自身が積極的に選択している場合
「薬漬け」をより厳密に言うなら、後者ではなく、前者でしょう。
私は、1の状態を極力避けるべきとは考えますが、2の状態を特段否認する必要はないと考えます。
むしろ患者さんは、この世にこのような人生の可能性を膨らませる薬物が存在したこと、そしてその薬物に出会えた幸運を寿いでもよい。
患者さんが長らく2の状態を維持しても不都合を来さないように導くことも、私達薬物療法を行う精神科医の重要な役割の一つです。
しかし、一点重大な問題があります。
それは、「新薬において、遅発性の副作用の予見が不可能である」ことです。
例えば、セレネースなど抗精神病薬の長期大量投与で起こるとされる「遅発性ジスキネジア」という副作用。
これは、「口唇をもぐもぐさせたり、舌のねじったり、また前後左右に動かしたり、歯を食いしばったりといった口部の不随意運動で、一度出現すると容易に治癒しない」とされています。
これは、セレネースという薬物が治験を経て、市場に登場したばかりの時には、認識されていなかったものです。
そして、世界中多くの臨床現場で処方され続けていくうちに、”発見”されてきたものです。
どんな新薬も、「これまでにある薬物のどれとも違う新しい薬効がある素晴らしい薬物」として鳴り物入りで登場します。
しかし、あちこちで使われていくうちに、どんどん”綻び”が生じてきます。
その”綻び”が小さなものであれば良いが、殊の外大きなものである場合、どうするのか。
精神科医はいつも、「新薬が患者さんの病態改善に寄与する可能性に賭けたい」というチャレンジャー精神と、「長期的に、どのような副作用が現れてくるか分からない」という警戒心との狭間で揺れ、ジレンマを抱えています。
いまだ新薬に位置づけられるジェイゾロフトの場合、「ずっと服み続けても大きな問題はない」と言い切るのは早計だと思います。
ただ今のところ、私の経験のみならず欧米の中長期的研究(ジェイゾロフトは、日本より欧米においてもっと早くから販売されています)においても、ある程度長期に服用しても大きな問題を残さず、患者さんの”良き人生の杖”になりうる薬物のように見える。
今後もそうであり続けることを、祈るしかありません。

(おわり)

熊木徹夫
(あいち熊木クリニック
<愛知県日進市(名古屋市名東区隣)。心療内科・精神科・漢方外来>
:TEL: 0561-75-5707: www.dr-kumaki.net/ )

本文は、
『精神科のくすりを語ろう・その2 ~患者による官能的評価の新たな展開~』熊木徹夫(日本評論社) )
から抜粋した記事です。

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