ジェネリック薬に対する当院の考え方(2012.4.)

 近頃、TVコマーシャルでもジェネリック薬(後発医薬品)の宣伝が多く行なわれており、厚生労働省からも、国民皆保険制維持のため医療費削減を行なう趣旨で、ジェネリック薬の処方を促進しようという働きかけが強まっています。その動きに伴い、各医療機関で発行される処方箋についても「成分名表示」にしていくよう、厚生労働省からの強い要請があり、あいち熊木クリニックにおいても、2012.4.よりその方針に沿った処方箋を出していくことに決定しました。「成分名表示」を推し進めることにより、患者さんがジェネリック薬を手にするための障壁が下がり、薬価の高い先発医薬品(以下,先発品)の処方数は減っていくものと考えられます。

 ジェネリック薬の普及が、先発品を創薬しようという薬剤メーカーのモチベーションを下げるかもしれないといったような問題についてはここでは触れません。もしジェネリック薬と先発品の薬効が全く同じであるなら、国の医療経済と患者さんの懐具合にとって、ジェネリック薬の普及はいいことづくめです。

 では、ジェネリック薬と先発品の薬効は本当に同じものだと言えるのでしょうか。私はこれまで独自に数千の「官能的評価」(これは熊木が提唱した概念。平たく言うなら、患者さんの主観的服薬体験、および精神科医の主観的投薬体験のこと)を収集してきました。そこで、「ジェネリック薬と先発品の薬効の違いを自覚した」という、かなり多くの官能的評価に遭遇しました。なぜ、このようなことが起こるのでしょうか。

 ジェネリック薬と先発品について、主要な有効成分は全く同一です。しかし、薬剤は有効成分と基剤によって構成されており、この基剤の違いが薬効に差異をもたらしているのではないか、というのが私の考えです。両者の薬効の差異が微々たるものであるなら、問題にする必要はありません。しかし時として、かなり大きな薬効の差異が自覚され、症状抑制ができなくなり、調子を崩してしまった患者さんも少なくないのです。

 とはいえ、私はジェネリック薬の処方・服用に全面的に反対するものではありません。臨床の現場では、患者さんの苦しみをほどくことが最優先事項ですが、患者さんの懐具合にも配慮することは必要だと思っています。それゆえにこのたび、厚生労働省の推し進める処方箋上の「成分名表示」に同調したのです。しかし、あらかじめ上記の事情を踏まえておいていただきたいのです。

 では、実際にどのようにジェネリック薬とつきあっていくのがいいのか。私の考えをお伝えしたいと思います。私は患者さんに遭遇し、その苦しみを解くのにどの薬剤がいいのか、常に先発品処方を念頭において判断しています。これは、これまでの莫大な処方経験が先発品であったこと、ひとつの先発品に対し他種類のジェネリック薬が存在し、それぞれの薬効がほとんど把握しきれていないことがその理由です。ですから、もし治療の最初からジェネリック薬処方を希望されると、私の想定外の治療展開が起こる可能性が高まるわけです。

 少なくとも最初の4~5回は先発品服用で行かれた方が、治療が安定すると思います。患者さん自身が、服用した先発品がどのように自らの身体になじむのか十分納得した上で、ジェネリック薬へ転換されるのであればいいのではないでしょうか。その時点なら、そのジェネリック薬が適正な作用を持つものか、そうではないか、ご自身で判断していただくことも可能かと思います。

 なお、患者さんがジェネリック薬を服用するメリットは、薬価が下がり、自己負担金が少なくなることのみに限定されることを考慮したとき、もともと薬価が低いもの(たとえば一錠30円以下のもの)についてまで、ジェネリック薬に変えたところで利得は少ないと思います。私個人としては、薬価が高いもの(たとえば一錠100円以上のもの)に限ってジェネリック薬処方に切り替えた方が、メリットが大きくなるのではないかと考えています。

 また、信頼性の高いジェネリック薬を探し当てるのは、薬剤の業界に通じていない一般の患者さんにとって、ほとんど不可能といってもいいほど困難なことだといえます。そのため、信頼出来る薬局の薬剤師に、その“目利き”を信頼して、オススメのジェネリック薬を選んでもらうことが重要になってきます。そして、先ほどお伝えした有効成分と基剤の話がそのとおりであるならば、毎回違うメーカーの薬剤を服用するのはナンセンスで、ジェネリック薬といえど一度あるメーカーのものに決定したならば、その薬剤を服用し続けるのがいいわけです。

 このような時代にあっては、患者さんが自己の身体感覚に覚醒し、それを頼りに、その薬剤や薬剤師の良否を判定する必要が生じてきます。いろいろ選択肢が広がったともいえますが、自己責任の領域が大きくなったともいえ、医療を受けることの難しさが次第に増してきている印象はぬぐえません。

熊木徹夫
あいち熊木クリニック<愛知県日進市(名古屋市名東区隣)。心療内科・精神科・漢方外来>
TEL: 0561-75-5707)

<※参考>

精神科薬物治療を成功に導くために、精神科医・患者双方が知っておくと良いだろうこと

妊婦さんや授乳期のお母さんの、理想的な精神科薬物との関わり方

先発医薬品は「マイカー」、ジェネリック薬は「全く癖のわからぬ他人の車」

服薬して楽に過ごしていくことは<甘え>だ

身体は「神様から借りた器」

中井久夫随想~論文「薬物使用の原則と体験としての服薬」をめぐって~


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