ジェイゾロフト(塩酸セルトラリン)の官能的評価(8)

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(IBS解消。✕副作用、離脱症候群?)<飲み始めた頃に限り、IBSの下痢を主とした症状が収まった。
感覚としては、ルボックスよりもパキシルに近い感じがして、よく効いているように思った。
飲み忘れると、頭のてっぺんから足の先へと電気が走る感じがした>
(1059 momoさん)

(めまい・頭痛が減弱)<5年前に始めて服用して、最初の1週間~10日間は頭痛(全体的にボーっとした痛み)と吐き気がひどく、食欲はほとんどありませんでした。
10日を過ぎたくらいから少しずつおさまりましたが、朝服用していたせいか、午前中が眠くてしょうがなかったです。
現在は就寝前の服用でまれに忘れてしまい、夜中に目覚めた時や朝起きた時にあわてて服用するのですが、めまい、頭痛の症状が出ています。
服用すると自然と治っているのですが、悪い事と自覚し、反省しています>
(2044 さむさん)

パキシルが代表的ですが、SSRIには「離脱症候群(中断症候群)」といわれるものがあって、急な服薬中断により、一過性の頭痛・めまい・不安・焦燥、そして時に幻聴など起こることがあります。
ただし、急減しないで漸減するならば、このような症状を引き起こすリスクをかなり軽減できます。
しかし実際のところ、SSRIをすべて抜き去るのにかなり骨が折れる場合があります。
SSRIの中でもとりわけパキシルは、増薬より減薬がはるかに厄介なことが多いので、私は「行きはよいよい帰りは怖い薬」だと言っています。
そのため、「本当にこの薬物でなくてはならないか」と常に自問自答し、ある程度の確信が持てる場合にこれを処方しています。
(念のため付言しておきますが、パキシルは決して悪い薬ではありません。
独特の切れ味を持っており、この薬物がどうしても必要な局面も少なくありません。
まさに「”余薬”を持って代えがたい」薬物の一つといえます。
しかし、この薬物の重篤な離脱反応のため、2001年アメリカで製造元の英国グラクソ・スミスクライン社を相手取り、大掛かりな集団訴訟が起こされています。
また、日本でSSRIが危険と認識されだしたのも、この離脱反応によるところが大きいです。
パキシルにまつわるこれらの問題は、精神科薬物の処方に慣れていない内科医などに対し、”安全で効果が確実な薬”と謳い、プライマリケアの現場で乱発を招いたことにあると考えられます。
実際は、パキシルは切れ味鋭いメスのような薬物であるため、素人が手を出すとやけどを負います。
すなわち、上級者(ここでいう上級者とは、不測の事態を想定し、それに対処もし得る精神科医を指す)向けの薬物といえましょう)
ジェイゾロフトは、このようなSSRIにおいて比較的マイルドな薬物だと思います。
しかし、そのような薬物でさえ、momoさんのような離脱症候群に近いことが起こりうる。
(momoさんのこの症状は、”瞬間的な離脱”によるものであるため、完全な断薬によって起こる離脱症候群より、軽いものであるはずです。なお、さむさんのめまい・頭痛も、ある種の”瞬間的な離脱”による症状ですが、momoさんの症状よりかなり軽微なものといえましょう)
ゆえにSSRIはやはり、処方者である精神科医が慎重にソフトランディングを目指すべき(これは、どの精神科薬物でも同じなのですが)ものだといえます。
重篤な副作用が起きた場合や躁転した場合については、急な断薬をする必要もありますが、そのような場合においてもやはり、患者さんが自主断薬を行うのは非常に危険なことです。
精神科医も患者さんもこのようなことが起こる可能性も念頭に入れつつ、それでも治癒の可能性を探るため慎重に投薬・服薬するのだという姿勢をあらかじめ持っていなくてはなりません。
(ちなみに、「止めようと思っても止められない」というならこれは「薬物依存」ではないか、という方がいるかもしれません。
しかし、これは「薬物依存」とは言えません。
というのも、
1)「薬物依存」に必ずある”快楽への渇望”がない
2)症状の発現は一時的なもので、この窮状をなんとかくぐり抜ければ、何の痛痒もなくなる
ため、服薬を止め得た暁に、患者さん自身がもう一度この薬物を服みたいなどとは決して考えないからです。

(つづく)

熊木徹夫
(あいち熊木クリニック
<愛知県日進市(名古屋市名東区隣)。心療内科・精神科・漢方外来>
:TEL: 0561-75-5707: www.dr-kumaki.net/ )

本文は、
『精神科のくすりを語ろう・その2 ~患者による官能的評価の新たな展開~』熊木徹夫(日本評論社) )
から抜粋した記事です。

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