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熊木徹夫プロフィール

あいち熊木クリニック院長(2007.7~)

資 格:精神保健指定医・精神科専門医・日本精神神経学会指導医・東洋医学会(漢方)専門医

所属学会:日本精神神経学会, 日本東洋医学会, 日本精神病理学会, 日本児童青年期精神医学会, 日本線維筋痛症学会, 日本スポーツ精神医学会

役 職:長久手市役所精神科顧問, 椙山女学園大学講師

著 書:7冊(2016年12月現在

連 載:産経新聞(連載)『精神科医 熊木徹夫の人生相談

【経歴】  
  京都市出身 洛星高校卒業の後
1995年 名古屋市立大学医学部医学科 卒
1995年~1997年 名古屋市立大学病院 精神神経科 勤務
1997年~2002年 豊橋市民病院 精神神経科 勤務
2002年~2004年 愛知医科大学付属病院 精神神経科 勤務
2004年~2007年 矢作川病院 勤務
  その他、社団法人岐阜病院、仁大病院、大同病院精神神経科などに勤務歴あり。

 

私を精神科臨床へ進ませた“極私的体験‥‥‥熊木徹夫

*以下の記事は、『kokutai』2004年9月号医学教育出版社シリーズ 道(その18)より抜粋

<高校時代,書店でふと目にとまった1冊の精神医学書に引き込まれ,精神科医になる決意をしたという熊木徹夫先生。以後,青春の紆余曲折を経て精神科臨床の現場に立つまでの“心の旅”。>

精神医学書を立ち読みし精神科医になる決意をする 私は京都に生まれ、同市内・北野白梅町にある洛星中・高等学校に進み、その後1年間の予備校時代までを京都で過ごしました。精神科医になろうと決意したのは高校時代のことで、今でもその瞬間を振り返ることができます。

洛星高校は男子校なのですが、今考えると大層個性的な仲間が私のまわりを取り巻いていました。とりわけ衝撃を受けたのは、“知的に早熟”な連中の存在です。
圧巻は授業中の“内職”で、フランス語でスタンダールの原書を読む者、五線譜に向き合い作曲にいそしむ者、数学者ガロアの群論のテキストを読む者、ミニコンピューターを持ち込んで分解・組み立てをしている者、朝古本屋で仕入れたペリカンブックス3冊を読みきって夕方に売り払う者など、それはそれは猛者ぞろいでした。

みんなきっと背伸びしていたに違いないのですが、そんな友人たちが少しまぶしく見えました。 回りの感化もあってか、本はよく読んだと思います。 その頃,私は演劇部に属し、部長を務めていたので、日本戯曲体系や能楽の本などを図書館で読んでいた記憶があります。
こういった“誰も読まない”本をひもとくとき、いささか心が躍りました。学校で教えてくれない何かを知ることが、日常から飛翔するための大切な<羽>になるとの予感があったのでしょう。

あるとき、素敵な響きを持つ<羽>を手にしました。それは“臨床家”という言葉です。困っている方に面と向き合い援ける人のことですが、当時はあまりに漠然としていて具体的なイメージを伴うものではありませんでした。
ただ、まわりの“知的に早熟な”連中が醸し出すムードの中、“臨床家”という言葉になんとなく酔っていたのだと思います。

しかし、高校3年生の夏にその転機は訪れます。演劇部から身を引いて随分たつのに、一向“演劇ボケ”が抜けない7月の土曜の昼下がり、私は河原町通り沿いの駸々堂書店(現ブックファースト・その昔初めての彼女とよく立ち寄ったところです)にいました。
心理コーナーで一冊の本がはたと目にとまりました。『精神科治療の覚書』(日本評論社)。
どうやら精神科医の中井久夫という人が書いたもののようです。 買おうかどうか迷いましたが、当時の小遣いでは高価すぎたので買うのをあきらめ、立ち読みすることにしました。

ページを開いた途端、自分の知らない精神科臨床の世界にぐんぐん吸い寄せられていきました。 書店で流れていたBGMまで覚えています。竹内まりやの「恋の嵐」。
たぶん5時間は立ちっぱなしだったはずです。
読み終えて店を出たとき、もうすっかり暗くなった夜の街に明滅する光がやけに眩しくて、軽くめまいがしました。興奮さめやらぬまま、帰途につきました。

「精神科医は、自分の身体を鏡にして患者さんの体験を写し取り、それを生かしてゆける仕事だ。分裂病(統合失調症)の人を援けられる医師は精神科医だけのようだ。 臨床の魅力というものが、やっとわかった。自分のこれからを精神科の“臨床”に賭けてみたい。 会ったことさえないけれど、この中井先生を信じてついていってみよう。 それから、精神科医として働けるようになるまで、この本は封印しておこう…」

こうして,私の“運命”は決まりました。
身体をいじめしこたま本を読み… 高校3年生のエピソードは結局これだけで、すんなり浪人生になりました。烏丸今出川の近畿予備校は医学部受験専門の予備校で、ここでようやく受験勉強の鬼と化しました。
友人が数人できました。皆私より年上でしたが、とりわけ心理学部卒業後、精神科医になるべく再受験する先輩にはお世話になりました。

精神的にも大人の彼は、勉強の合間によく私の青臭い話を聞いてくれました。 私はなぜ精神科医となるのか、どんな医師になりたいのか等々。 受験勉強が精神科医になるために必要、と合理化できないにもかかわらず、勉強を続けねばならないことにジレンマがあったのだと思います。
彼のアドバイスには“人生の味”が染みており、深く頷かされることもしばしばでした。 ひとりで過ごす時は、予備校隣りの京都御所で鳩にパンくずをまきながら、その様子をじっと見ていました。

名古屋市立大学に入学し、初めて京都を離れました。
新入生歓迎キャンプに参加することになった時、バブルに浮かれ地に足がつかないような同級生が多いなか、べったり足のついた190cmの大男を発見しました。
後に私と同じ精神科医になったM君です。

山中のテント、震え上がるような寒さのなか、お互いの将来への思いを語り合い、夜を明かしました。それが,この後数えきれぬほど繰り返された“語りの夜”の最初でした。 時代に抗うかのように、二人体育会系の野球部に入り、身体をいじめました。
そしてしこたま本を読み、ふんだんに映画を見て。楽しむというより、苦行を課するかのように。

そのうち私は原因不明の高熱に襲われ、身体を壊してしまいました。
この期に及んで“自分を生かしてくれている身体”に対する慈しみの気持ちを、初めて感じられるようになりました(そんな訳で,精神科医となった今でも、さまざまな形で自分の身体を痛めつけてしまう患者さんたちの不器用な生き方を目にすると、「あほやなあ」といいつつも、つい共感したりしてしまうのです)。

いつも私のそばにいる(誰か)―このように紆余曲折を経て、私は精神科医の道を歩き出したのですが、幸いだったことがあります。
それは、中井先生の本と出合ってから心の中に描いてきた精神科臨床のイメージと、実際に遭遇した精神科臨床には、現実に向き合うことのシビアさに違いがあるにせよ、根本的には大きな違いが見出せなかったことです。
それゆえ、やっと自分が生き延びられる場所にたどりつけたというのが、その当時の実感でした。

最後に、拙著『精神科医になる~患者を(わかる)ということ』(中公新書)のあとがきより、次の一節をひかせていただきます。

「(前略)治療者と患者という二者関係は、その治療経過がはかばかしくなく迷走状態に陥ると、煮詰まって双方とも身動きが取れなくなってしまう。 このような膠着をほどくのはいつも、シリアスな二人を斜め上から眺めている(誰か)である。

この(誰か)は、いささかの諧謔を弄しながら、治療の場を相対化する手助けをしてくれる。 力尽きそうな私の後ろを押してくれる。
後で振り返って、治療がうまく運んだと思えるケースでは、たいていこの(誰か)が舞台の隅をかすめる程度に、しかし絶妙なタイミングで登場してきているのがわかる。

本書は、私のそばにいつもいるこの(誰か)が、その位置から見える臨床のあれこれについて語る言葉に、私が耳を傾けながら書き上げたもののような気がしている。(後略)」

この(誰か)のおかげで、私は今も精神科医としての人生の(旅)を続けられています。

以上,こんな“極私的体験”をなぞってみても、何らヒントは見つけ出せないかもしれませんが、ひとつだけ皆さんに伝えたいメッセージがあります。

患者さんの内的体験に対し自らが写し鏡となり、治療者として感じられた何ものかを臨床に生かしたいなら、精神科医になるのが最良の選択です。
この一文に何か感ずるところのあった方、私たちの仲間になりませんか。
一緒に精神科臨床を支えてゆきましょう。

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