<パチンコ依存症(ギャンブル・パチンコ・パチスロ・スロット)治療のキモ>―パチンコの呪縛から抜けられないあなたのために
ギャンブル依存症治療受診受付の一時休止について
あいち熊木クリニックは、ギャンブル依存症治療を専門外来治療の一つとして、これまで数多くの患者さんをお迎えしてきました。
社会問題化ともなっている、ギャンブル依存症治療を行う医療機関として、これまで度々メディアにも取り上げられたこともあり、今でも多くの初診のお申し込みを
いただいています。
診察をご希望される患者さん・ご家族にはご迷惑をおかけすることになり心苦しいのですが、何卒ご理解のほど、よろしくお願いいたします。
ギャンブル依存症治療再開の目処が立ちましたら、改めてお知らせいたします。
あいち熊木クリニックで治療をご希望の方は必ず最後まで通読ください。
最近、当院・あいち熊木クリニックにおいても、
パチンコ依存症(およびパチスロ依存症)で悩む患者さんの受診が増えています(現在あいち熊木クリニックには「パチンコ[ギャンブル]依存症専門外来」があります)。
「『パチンコ依存症』なんてそんな病気があるのか?」と訝る方もいるでしょうが、実際はかなり根深い問題なのです。
そこで「パチンコ依存症」なるものを知っていただくため、それへの対処を当院がどう講じているのかを説明いたしましょう。
1. パチンコ依存症として、受診に至る経緯は?
パチンコは、なかなかに怖い遊技です。
町のそこらじゅうにパチンコパーラーがあって、四六時中パチンコのCMが流れている現代にあっては、人々はいともたやすくパチンコの誘惑に負けてしまいます。
そもそもパチンコはカジュアルなレジャーのひとつとして捉えられていて、まさかそれほど怖いモノだとは考えられていません。
しかし、1時間に数万円も儲かったり、すったりしてしまう現代のパチンコほど、射幸心をあおるモノはそう多くはないのです。
そして、一度パチンコにはまると、(ビギナーズラックがきっかけになることが多いようです)
一日中パチンコのことで頭がいっぱいになり、
パチンコパーラーにいきたくてしょうがなくなり、
日々パチンコ代をどう捻出しようかと頭をひねるようになります。
挙げ句、借金(それも数百万円になることが多い)に手を出すようになり、それを家族に隠し通すようになります。
家族や近親者、それに自分に対してもウソをつくことが常態化します。
「俺はパチンコで決して損をしていない」
「いつか大儲けして、これまでの借金を全部取り返してやる」
などと思うようになっては、かなり末期的です。
実際に、家族にこのような状態が発覚するのは、借金で首が回らなくなってからが多いです。
そして意外なことに、パチンコ依存症の患者さんは、パチンコ以外には問題がない、普通の真面目な社会人の方に多く見られるのです。
大概は、我慢強く、愚痴などもらさず、気弱にニコニコ笑っているような感じです。
ストレスをうまく吐き出すのが苦手で、そのためパチンコを安易にストレス解消法として選んでしまうことが多い印象です。
このことを奥さんが知ると大抵泣き崩れ、患者さんがパチンコ辞めないならば離婚だ、と強く言い放ちます。
困り果てた夫婦が、当院受診に至るというわけです。
2. パチンコ依存症の治療を始めるにあたり、大切なこと
さて私(熊木)は、患者さんと初対面となるのですが、その際、極めて重要なことを、最初にお伝えします。
それは、
- 患者さんご本人が、パチンコ依存症からの脱却に、本当に切実な思いを持っていること。
- 配偶者(夫や妻)が、治療に協力的であること。
です。
(1)パチンコをやめないままならば、破産してしまう、失職してしまう、離婚が避けられないとなると、患者さんはパチンコ依存症からの脱却に懸命にならざるをえません。
パチンコ依存症の治療については、長期間・持続的な忍耐が求められます。
そのような切実な背景がない場合、患者さんは途中で治療を投げ出すかもしれません。
でもそれでは治療にならないのです。
パチンコ依存症からの脱却は、最終的には本人次第ということになるからです。
(2)配偶者が、「どうでもいい」という姿勢であるならば、治療の見通しは大変暗いものとなります。
パチンコ依存症は当事者の問題だから、とせず、家族みんなで克服するのだという気持ちが配偶者にあるならば、この“家族の危機”は乗り越えていくことができるでしょう。
「雨降って、地固まる」という言葉もあるように。
当院では、初診時に必ず、配偶者にも立ち会っていただくことをお勧めしています。
3. パチンコ依存症治療の要諦
詳しくは、初診時に熊木よりお伝えしますが、概略は以下の通りです。
-
より無害な依存をつくる。
-
夫婦で離婚の念書を交わす。
-
精神療法開始
-
補助的薬物療法
(1)「パチンコ依存症なんて、所詮自分の気持ちの持ちようだから、やめてしまえばいいだけだ」なんて意見もありますが、長期間に渡って形成されたパチンコ依存症は極めて強固なもので、無理矢理パチンコをやめて我慢しさえすれば、というのは、本人にとって拷問に近い苦しみです。
私は、パチンコ依存症という極めてたちの悪い依存症から、別のより無害な依存への置き換えを提案しています。
これは“禁煙パイポ理論”なんて呼んでいます。
昔、「禁煙パイポ」という禁煙家向け商品がありました。(今もあるのかな?)
「禁煙パイポ」とは何か?これはハッカです。
すなわち、タバコのニコチン依存症から、ハッカ依存というより無害な依存に置き換えるという発想です。
これは依存症治療において、非常に大きなヒントになります。
急激に依存症からの脱却を目指す治療がハードランディングだとするなら、“禁煙パイポ理論”はソフトランディングですね。
人間はそんなに強いものではないので、あらゆる依存・嗜癖を取り払うと、本当に生きづらくなってしまいます。
その“人間の弱さ”への配慮を込めたやり方です。
(2)パチンコ依存症患者さんの配偶者のなかで、本当の意味で離婚したいという方はそう多くありません。
しかし、パートナーの今後の人生への覚悟を問うために、離婚を突きつけているのです。
まさに人生の崖っぷちですが、このような状況で交わされる離婚の念書には、非常に大きな意味があります。
(3)当院では、臨床心理士による精神療法を行っています。
依存症の治療においては、自己との対峙が何より重要になります。
ただ、依存症に陥る傾向にある人は、そのような内省が何より苦手で、そのような状況から逃避してしまう傾向があるようです。
そのため、精神療法の専門家と対峙するなかで、自分というものを見つけていくことが大切です。
また、このような治療は、パチンコ依存へ戻ることへの誘惑を強力に抑止する効果もあります(現在、当院パチンコ依存症治療では、精神療法に必ず取り組んでいただいています)。
(4)パチンコ依存症治療においては、薬物療法は主役ではありません。
ですが、パチンコの強い誘惑に抗しようとする姿勢を患者さんが持っているならば、そのサポートを行える薬物が、多少なりとも存在します。
そのようなものをチョイスし、助力を行いたいと思います。
最終的に、パチンコ依存症から脱却できたとしたなら、「そんなやらなくていいことを、やめただけだから評価に値しない」という人もいるかもしれませんが、私はそうは思いません。というのは、パチンコ依存症から脱却というのは、患者さん本人にとって、死ぬほど苦しいものだからです。
だから「本当によくやった」と評価したいと思います。
脱却のあかつきには、自身の”足腰”が相当強くなり、新たな人生を踏み出していけることでしょう。
熊木徹夫
(あいち熊木クリニック<愛知県日進市(名古屋市東隣り)>院長)