しかし彼女は、もう振り向かない。
自分の体からのざわめきを押さえ込み、こうつぶやく。
「私の体なんだから、私がどうしようと、私の勝手」
やがて、体からの叫びは、彼女の意識から遠のいてゆく。

食べたいものは、次から次へと浮かぶ。
あれも食べたい、これも食べたい……。
彼女の頭は、食べたいものに一日中支配されていく。

そして彼女は、ついに我慢の限界に達する。
あれほど食べてはならないと自らに禁じていたポテトチップスを口にしてしまったとき。
もう欲望は堰を切って、止まらなくなる。
ポテトチップスも、菓子パンも、ドーナッツも、ぜんぶぜんぶ食べてしまえ…。

ひとしきり食べ、もうこれ以上おなかに収まらないところで、はたと思い至る。
「あ~あ、とうとう食べてしまった」

それからの彼女は、何も食べないか、徹底的に食べるか、極端を行き来するジェットコースター。
腹八分目も、いい塩梅もない。オールオアナッシング。

絶食の我慢の末、またもや好きなものを食べ尽くし、「努力が水の泡」と泣き暮れる彼女。
どうしようか、どうしようか、とじたばたした後、げぼっと吐き戻した。

あっ、これだ。
これでいくら食べても太らなくてすむ。

この“気づき”こそ、彼女を地獄へ追いやる。 過食、そしてそれに続く嘔吐を繰り返していると、いよいよこのサイクルから抜け出せなくなっていく。

「ダイエットしてキレイになりたい」というささやかな願いはどこへ行ったか。
彼女は、とんでもないところへ来てしまった。
もう、元へは戻れないのか……。

生きづらさを抱えたあなたへ